【物語】シャーロキアンのホームズ(4)〜虚構ホームズの誕生〜
【第四幕】
やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。
なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。
第三幕では、
かつての友人が路地裏で、
大男に男を殴らせていた。
ケンカなんかじゃない卑怯者のやり方だった。
それを止めたら、
僕のせいにされた。
そしてスコットランドヤードのいる警察署の
取調べ室で、
僕は書類にサインをした。
「こんご彼に近寄るな。
それだけを守れば
留置所にはぶち込まない」
僕は抵抗なんてできなくて、
泣きながらサインをした。
ブザマで情けなくて、
必死になって謝った。
僕は三年前にも
問題起こして
一度は逃げ出した。
それがとっても、
まずかった。
何を言っても、
彼らの目は、
僕を犯罪者として見る目だった。
彼らが本当に守るべきは何なのか?
神さまを信じる僕なのか?
それとも、あの蜘蛛なのか?
下唇を噛んでいた。
ーーこんな時、
あの探偵だったらどうしたろう?
こんなの間違えている。
僕は、ーー僕は現実の人間なのに。
僕は両親によって
遺された自宅に戻って、
自室に飛び込んだ。
あまりにも悔しくて、
惨めな気分だったから。
誰かに話そうと思ったけど、
このロンドンは僕を冷たく拒絶した。
誰かに、誰かにーー
話す機会が僕にはなかった。
彼女にこんな事を話すのは、
論外だった。
あの蜘蛛は、
自分の邪魔になると判断したら、
女子どもも切り捨てる。
巣ごとーー。
笑いながらーー。
いっそクスリに手を出して、
違う世界を見たら、
その方が幸せなんだろうかーー。
路地裏に横たわる連中のように。
僕は何気なく新聞を手にしてた。
これは三年間の変化を、
確認するためのものだ。
僕の失われた過去の結果だ。
黙って目を通していた。
するとシャーロキアンの集会の記事に、
目が止まった。
『シャーロキアンのホームズ。
やあ、君。ボクはシャーロキアン。
ホームズのファンの一人さ。
だけど、ただのファンではない。
限りなくホームズに近い。
容姿も思考もだ。
だけど、ホームズには誰にでもなれる。
君が少し頭を働かせたら、
魔法使いみたいに、
相手の過去現在ーー
もちろん未来さえも見通せる。
髪が黒に近く、
目が灰色、
やせぎみで背が高ければ、
君もシャーロキアンのホームズだ。
集会場はロンドンの
下宿221Bのある建物の前だ。
集まれ、同志たち!
』
これはいったいーー
なんの冗談なのだろう。
僕は何度も繰り返し読んだ。
でも、考えているヒマはなかった。
家を飛び出して、
僕は辻馬車に飛び乗った。
目指すはベイカー街の221Bだ。
一睡もしてなかったけどーー
かまうもんかーー。
例の建物に到着したのは昼頃だった。
シャーロキアンのホームズと
名乗る男たちは五人以上いた。
僕は薄汚れたシャツと
黒ズボンを履いていた。
探偵というよりも、
まるで海賊だったろう。
男たちは黒髪短髪に灰色の瞳、
顔つきはワシ鼻に
角ばった顎が目立った。
まるでインディアンだ。
群れで行動してた。
群れから一人のホームズが
近づいてきた。
彼はディアストーカーハットと
インバネスコートを身につけていた。
ステッキとパイプをもって、
僕に微笑んだ。
「やあ、君。すごい格好だね。
原作にこういうのあったかな?」と
ホームズは笑い出した。
「え、いや、その、あ、あのーー」と
僕は思わず吃ってしまった。
「何かわけでもあるんだね?」
すると、彼は驚くべき事を言った。
「君は無職だ。
だが、引きこもりではない。
本はよく読む方だ。
だが悲しい事が起こって、
頭に入らないーー」
こんな無遠慮に言われた時、
僕の頬は引きつった。
こうして、第四幕は無遠慮な観察で幕を閉じる。
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