第七幕:闘争

やあ、君。物語は誰のものだろう。
君のための暇つぶし?
それとも、ボクがーーもっと君と話ができる対話のようなものなのかーー

第六幕では、シャーロック・ホームズに黙って、恥知らず生産機をロンドン中にばら撒いたワトソンを見た。

ベーカー街の下宿の221Bの過ごしやすい居間。ソファにワトソンは座り込んでた。その時にホームズが目の前に現れた。
ワトソンホームズをイヤなものでも見るかのように、見た。

ワトソンは大きく呼吸した。
「共通の友人にーーわかった。いいよーー」とワトソンが応える前に、ホームズはワトソンと向かう側のソファに腰を下ろした。
彼はひどく疲れているようだった。

「ーーで、ワトソン。僕に言いたいことはあるかい?」
「ーー君の指摘はありがたい。でも、あれはボクの物語だ。
好きにできる財産だ。
それにーー読者にはバレない。
君から指摘された事ーー
誰も気づきやしない。
ボクは、ボクは、
ーーそこまで社会的な影響はない。
そんな力はないんだーー
君に許しを乞えと?
なんで?
ボクはーーやるべきことをやり、
世間も喜んだだけだ。」
「世間か。君ーー、世間なんかを基準としたら、大変だ。
いつ君の尻が蹴飛ばされるか、わかったもんじゃない。ーー気をつけるべきだ。ーー行動にもね。」

二人はしばらく沈黙した。
ホームズは、言いたくて仕方なかった。彼はガマンするようにできてない。
「少しだけ、ほんの少しだけだ。
君の付け加えた問題について、話したいんだ。」
ホームズは気まずそうに言った。
「ハーレムとボンクラ化についてだ。」
ワトソンは、ジッと考えた。
「ハーレムは、王侯貴族とかでもあるし、何も問題ないと思った。
ファウストが、女たちをとっかえひっかえさせないように、ボンクラーー朴念仁とか必要だったーー」
ワトソンは、そういうと静かに目を閉じた。
「読者に愛されるようにねーー」
ホームズは目を細めた。
「ハーレムはダメだ。彼を危険に晒す。そして、女性の価値すらも徹底的に貶めている。」

「そんな事はーー女性たちが守ってくれる。悪魔の幹部もいるし、騎士だって、大富豪の娘や、姫さえも、彼に好意を持ってる。彼の基盤は、彼の安全は保証されたも同然さ」
「それは彼の利用価値がある間だけだ。女たちは彼の子種を狙っている。
負け犬の魂を?
違う。断じてね。
ーー王の身体だ。それ以外はカスだ。」

ワトソンは震えた。ヒゲを震わせ、目を見開き、唇を薄く開いた。
ホームズは、止まらなかった。
「ファウストから得るものを得たら、彼女たちは、ファウストを去勢する。
神話の模倣だ。悪趣味な物語が再演される。君のファウストには自由はない。永遠にね。子孫は互いに憎しみ争い、最後の崩壊まで止まらない。
君の持つ鋭い知性とやらは、悪い方向へと導く。これは架空の世界の話だ。」
ホームズは一旦止めた。
「次は現実問題だ。君がハーレムを形成する事で、女性の立場は男に尽くす事が義務付けられた。
読者は、ーーそう思う。
君の意図がなんであれ。
読者の目には、女は強い男にひざまずく事が普通になる。
なぜかって?
ファウストがハーレムを作り、創造者たる君が認めたからだ。

ーー君は自分の母すら貶めた。

ーーわかるかい?」

ワトソンは何か言いたそうにしていた。
彼は窓の外を見た。
空は晴れ渡り、まだ昼だった。
昼間だったんだーー。
ワトソンの口はあんぐりと開けられた。まだ昼だったからーー。

ーーまだ続くんだーー

こうして、第七幕は太陽によって幕を閉じる。

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