やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。
なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。
第二幕では、
僕はコナン・ドイルの付き人として
屋敷に連れ込まれた。
そして彼の妻ルイーザに、会った。
彼女は結核で、
ここは『彼女のための最後の家』だったーー。
「冗談じゃないーーあの女はーー結核だ・・・・・・」と
僕はことの顛末を話した。
様子を見にきたシャーロキアンの群れの
リーダーの帽子ホームズにね。
そこはサリー州ハインドヘッドの屋敷の裏口だった。
屋敷の中は
息を潜めたように静かだった。
誰も感染者のいる屋敷を
襲う者なんていない。
だから見回りもない。
帽子ホームズは
ステッキによりかかりながら、
立ったまま話を聞いていた。
彼と僕の違いは
ディアストーカーハットの
有無でしかないだろう。
帽子ホームズはーー
しばらく考えた。
一秒以内で考えられたのだろう。
声は弾んでいた。
「おい、君。これはチャンスだぜ。
その女の心をつかんで、
コナンにホームズ本を書かせるんだ。」
「どうやって?」
「そりゃあ、女なんざ適当な事いって
ほめてやりゃあ、
勝手に気持ちよくなるさーー
気持ちよくさせるんだ。
それがーー
骸骨のように痩せた女であれね。」
「ーーそれは、卑劣なヤツがーー
やることでは?」と言った。
するとーー彼から
不満げな声が返ってきた。
「もう何作も・・・・・・
あの野郎はホームズ本を書いていない。
このままだと、
彼の中にいるボクらのホームズが、
歴史バカになるのも
時間の問題だぞーー」
彼は一呼吸おいて言葉を続けた。
「そうなったら、ボクらは、
おしまいだーー」
「まさか」
「そのーーまさか、さ。
ボクらは知性を磨けず、
他のシャーロキアンたちも
アイツを見限る。
ホームズ本は川に投げ捨てられるんだ。
そうなってみろ、
まるでボクらはバカだ。
マヌケ集団になりさがるんだ。」
彼の話を聞くと、
僕は不安になった。
事態は深刻なのかもしれない。
次の日から、
僕は本格的に
ルイーザの世話係になった。
誰も彼女に近寄りたくないからだ。
僕にとっても都合が良かった。
ーーこの家の連中は、
コナン・ドイル以外は、
僕にも近寄らなくなった。
この屋敷でもーー孤独だった。
この孤独は
ルイーザも分かっていたーー。
彼女は決して部屋から出なかった。
僕と話す時ですら、
上から目線ではなく、
一人の人間としてーー
すまなそうに扱ってくれた。
だから、僕は心からーー
彼女を『奥さま』と呼んだ。
こうして、第三幕は孤独により幕を閉じる。
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